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水頭症

脳脊髄液(CSF)の産生 l  髄膜 l  CSFの循環 l  CSFの構成 l  CSFの機能
水頭症 l  代謝性水頭症 l  閉塞性水頭症 l  鑑別診断 l  治療

水頭症という病気を理解し、適切な治療を行うためにはまず、病気にかかわる構造(解剖学)および機能を理解する必要があります。最近では、インターネット上でさまざまな情報が手に入ります。
水頭症に関しても多くのページが存在しています。また、一部の動物病院でも“水頭症は薬で治療するけどなおるものではない。外科はデメリットが大きいからね”というような説明も耳にします。
これらのことで“水頭症という病気は脳に水がたまる病気で、治療は薬と外科治療があるが手術は一般的ではない”という風に受け止めてしまいがちではないでしょうか?実際に水頭症が疑われた際に、どのような病気で、どのような検査をし、どのような治療をすることが適切であるかを理解する必要があるのではないでしょうか。

脳脊髄液の産生

脳脊髄液(CSF: cerebrospinal fluid)は中枢神経系(脳や脊髄)と軟膜に存在する毛細血管から発生する。
特に側脳室、第3脳室、第4脳室の中に存在する脈絡叢と呼ばれる場所で最も多く産生されます。
また、くも膜下腔における血管からもCSFが産生されます。この脈絡叢と呼ばれる組織は多くの絨毛突起から成り立ち、この位置で血漿から限外濾過、能動輸送によりCSFを産生します。CSFは血漿に比べて、カルシウム、カリウムの含有量は低く、ナトリウム、クロール、マグネシウムの含有量は高い。グルコースは血漿の80%程度である。
CSFの産生速度は、犬種やその測定法によって多少変化しますが、通常1日に3−5回ほど全量が入れ替わります。
ある研究では、犬で1分間に約0.047ml、猫で0.017mlという数字もあります。
また、この産生は一定の速度で行われます。 この産生速度に影響を与えるものとして、水頭症などによる脈絡叢の萎縮や高張液などの静脈内投与がCSFの産生を遅らせます。高張液(マンニトールなど)の投与は、脳外傷時や手術時に利用され、明らかな脳容積の減少を認めます。

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髄膜:くも膜下腔

すべての中枢神経系の組織は硬膜、くも膜、軟膜の3層の膜に覆われています。最も外層の膜は硬膜です。このもっとも外層にある膜は頭蓋腔内ではほとんど直接頭蓋骨に癒合し、脊柱館内においては脊椎と硬膜の間には脂肪などで満たされた硬膜外スペースが存在しています。くも膜は硬膜の内側の膜で硬膜と癒合して存在している。このため、通常、硬膜とくも膜の間にはスペースは存在していません。また、くも膜は軟膜との間にくも膜下腔を形成します。くも膜下腔には、CSF・血管・脊髄神経根・くも膜小柱を含みます。

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循環

CSFは脳室系(側脳室、第3、4脳室)で産生され、これが第4脳室の側孔を通り循環していく。側孔を通ったCSFの多くは、小脳背側を通り静脈洞の存在する大脳全域に広がっていく。また、CSFの流れは脈絡叢内の血管の拍動によるものと考えられている。頭蓋内は閉鎖されたスペースで、中に存在するものは脳実質・血液・CSFから成り立っています。これらのうちいずれかの容積が増加すれば、他の組織の容積の減少によって代償されます。このため、動脈の拍動のたびに頭蓋内の圧力は上昇し、側孔にCSFが押し寄せます。また、頸静脈を圧迫すると、頭蓋内の血液量が増加するため、頭蓋内CSFの容積が圧迫され、大聡の位置のCSFの流出量が増加する。
頭蓋内腔に腫瘍や外傷などによる占拠性病変が生じた場合、中枢神経系はその化学物質、神経、筋肉などの自動調節能により血液の脳潅流を維持することを試みます。この機能は特に、ゆっくり成長する腫瘍などで非常に効果を発揮し、長い間神経症状を呈さない場合があります。中には50%程度の圧迫まで許容する場合もあります。この許容量を越えた時点で神経症状が発症します。

吸収

CSFの主に静脈洞に存在するくも膜絨毛および、大脳の血管から吸収されます。特にこのくも膜絨毛の集まりはくも膜顆粒と呼ばれます。これらの表面は一方通行の弁が存在し、CSF圧が上昇した際にCSFが血管内に流入します。また、一部のCSFは脳脊髄実質の毛細血管に吸収されます。

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CSFの構成

頭蓋内には血漿、CSFそして細胞外液の三種類の脳実質に影響を与える液体が存在する。これらが自由に混ざり合ってしまうことは、脳の機能維持の上で非常に危険であるため、これらの液体間には形態学的な、また、生理学的な障壁が存在します。毛細血管レベルに存在する細胞外液と血漿の間には血液脳関門(BBB: blood brain barrier)と呼ばれる障壁が存在する。この障壁は、グルコースやアミノ酸などを自由に通過させ、ペニシリンなどの抗生剤を通過させない。しかし、クロロマイセチンやサルファ剤などの抗生剤は問題なく通過し、細胞外液内で抗菌量に達することができる。また、イベルメクチン製剤は通常BBBを通過することができないが、コリーやオーストラリアンシェパード、オールドイングリッシュシープドッグではこのBBBにおける構造が欠如していると考えられ、強い感受性を示す。

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機能

頭蓋内腔において、このCSFおよび血流とともに脳圧の調節を行うことにより脳実質および脊髄にたいし、物理的な圧力から保護されている。また、脳脊髄液は血液と脳実質の間に存在する、脳実質に対する栄養の供給源でもある。このほか、神経伝達物質、イオンバランスの調節など様々な役割を果たす。

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水頭症

水頭症はCSFの脳や頭蓋内腔における過剰な蓄積による発症する症状を指します。
しかし、本当の定義は症状の有無にかかわらないCSFの容積の増加を指します。また、水頭症という病気を分類するために様々な言葉が存在します。

  • ・ 内水頭症: CSFの蓄積による脳室系の拡張がある状態をさします。
  • ・ 外水頭症: CSFの蓄積によるくも膜下腔の拡張がある状態を指します。
  • ・ 非行通性水頭症: 脳室内の流出路の閉塞により発生する脳室の拡張を指します。
  • ・ 正常圧水頭症:脳室の拡張は認められるが、脳圧が正常な状態
  • ・ 高圧性水頭症:CSFが高圧な状態にある水頭症

    多くの水頭症は代償性と閉塞性に分類されます。

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代償性水頭症

CSFの容積の増加により、脳実質を占拠性に圧排し、脳実質に取って代わる。臨床症状はこの欠損する脳実質の位置により様々な症状を呈する。大動物における様々なウイルス病、栄養欠乏性、水無脳症や猫の虚血性の脳症などに起因することが多い。

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閉塞性水頭症

CSFの流出路の閉塞、および吸収の阻害によるCSF圧の上昇に伴う脳室拡張をいいます。様々な原因がCSFの流れの阻害を引き起こします。この原因は大きく、後天性閉塞性水頭症と先天性(発達性)閉塞性水頭症に分けられます。

後天性閉塞性水頭症

腫瘍は脳室間孔、第3脳室、中脳水道、側孔などのCSFの流出路を閉塞します。これらの閉塞が上流のからの流れを阻害するため、非行通性の高圧水頭症の原因になります。基本的には腫瘍の成長による脳実質に対する傷害が症状になりますが、この水頭症による圧迫も症状を増悪させる原因となります。また、腫瘍による静脈洞の間接的な圧迫も吸収の阻害となり得ます。
中脳水道や側孔などの狭い流出路における上衣炎、細菌性髄膜炎などの炎症も、閉塞の原因となり得ます。
先天性(発達性)閉塞性水頭症 先天性閉塞性水頭症は発達性としても知られ、先天的な奇形により、CSFの流出路の阻害および、吸収の阻害のため脳室の拡張を呈すものです。
一般的な奇形は、中脳水道を狭窄し、これが非行通性の高圧性水頭症の原因となります。先天的に異常を持つ犬では、正常より明らかに拡張した側脳室および第三脳室をもって生まれてくる。その脳の皮質の厚さは1?2mmであることがあり、時には後頭葉付近では軟膜神経膠膜のみ存在していることもある。典型的には隆起したドーム状の頭蓋骨を呈し、明らかに大きなモレラが存在することが多い。

臨床症状

発生性閉塞性水頭症は全ての犬種において散発性に認められるが、トイ種や短頭種において、多くの発生を認める。特に、チワワ・ペキニーズ・パグ・ボストンテリア・ヨークシャテリア・ポメラニアン・イングリッシュブルドッグで多く認められる。この病気は猫では一般的ではない。胎内での遺伝的な阻害が疑われるにもかかわらず、臨床症状は生まれた時点では認められないことが多い。ほとんどは3ヶ月齢からみとめられ、いくつかは3?12ヶ月齢でみとめられ、まれに12ヶ月以上で認められる。いくつかの犬では明らかな脳室の拡張が認められ、脳の萎縮が認められるにもかかわらず、臨床症状を示さない。このことは、臨床症状はCSFの容積ではなくCSF圧に関係していることを示している。もっとも一般的な臨床症状はもともと前脳症状である。このことは重度の脳室拡張が大脳組織を侵襲し、間脳圧迫を起こすからである。

前脳症状

発作や異常行動がもっとも多く認められる症状であります。しかし、動物病院の検査時には通常その症状を確認できることは多くはありません。特に、ゆっくりとした性格の変化などは飼い主のみが評価できるものとなります。また、トレーニングの失敗、状況判断力の欠如、飼い主に対する態度の変化などが認められます。症状が進行した場合、うつや昏睡などで表現される、意識レベルの低下、視覚の低下なども認められることもあります脳室の拡張による小脳や延髄の圧迫などが存在する場合には歩行異常なども認められます。

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鑑別診断

この年齢で、もっとも一般的で前脳症状を示す疾患は門体循環シャントに関連した肝性脳症である。肝臓に問題を持つ犬とのもっとも大きな違いは、食飼の質やその時間に関連した症状を示すことです。感染症や先天的な蓄積病もその他の鑑別診断ではあります。

診断

多くの補助的な方法が側脳室の拡張を確認するために使われています。特にMRIとCTいずれかの検査より、この病変を確実に証明することができます。MRIはもっとも正確に頭蓋内のCSFの貯留を確認することができ、そして、脊髄における脊髄空洞症を認識することもできます。子犬において超音波検査もモレラから、もしくは薄い場合に限るが頭蓋冠からプローブを当てることにより検査することができる。レントゲン撮影も大脳脳回の欠損パターンを検出することがあります。MRIやCTが使用される以前は、これらの診断の確認には空気や造影剤を脳室内に投与し検査を行っていたが現在ではCT・MRIを上回るメリットがないためほとんど行わない。

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治療

もし、最近購入した犬において重度の発生性閉塞性水頭症を診断したなら、消耗性の神経症状を伴うのであれば、安楽死も検討しなければならない。なぜならその子犬にとってのquality of lifeは非常に好ましくないものであるからである。低容量コルチコステロイドがCSF産生量を低下させることができるかもしれない、しかし、最も効果的な治療法は外科的処置になります。シャント術は容易に側脳室から皮下を通し腹腔に設置することができる。外科対応は通常よい結果をもたらすがすべての症例で完全に治るわけではない。また、生きている間定期的な管理が必要になる。

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